研究概要 |
Ni-Mn-Zn(Z=In, Sn)磁性形状記憶合金においては、マルテンサイト(M) 相からオーステナイト(A) 相への変態に伴い電気抵抗率が急激に減少する。また、上記合金のM相に磁場を作用すると磁場誘起逆マルテンサイト変態に伴い、巨大磁気抵抗効果が現れる。この巨大磁気抵抗効果発生の起因については現在不明である。上記合金に現れる巨大磁気抵抗効果の起因を調べる目的で以下の研究を行った。 (1) 新磁性形状記憶合金の発見 熱弾性型のマルテンサイト変態を示すPd-Mn-Sn新磁性形状記憶合金を発見した。その磁気的、電気的、結晶学的特徴は上記Ni-Mn-Z(Z=In, Sn)合金のそれと類似している。すなわち、Pd-Mn-Sn合金のA相はL2_1構造を示し、温度の下降に伴いキュリー温度で常磁性A相から強磁性A相に転移する。さらに温度を下降させるとM変態に伴い強磁性A相から非磁性M相に転移する。M相の結晶構造は4倍周期をもつ斜方晶である。低温では小さな自発磁化を持つM相が現れる。 (2) 巨大磁気抵抗効果の観測 Ni_<50>Mn_<37>(Sn_<0.8>In_<0.2>)_<13>合金にて、約45%の負の磁気抵抗率の変化を観測した。また、上記Pd-Mn-Sn合金においても負の大きな磁気抵抗効果を観測した。Ni_<50>Mn_<25+x>Sn_<25-x>合金のバルク敏感光電子分光実験と第一原理バンド計算を行い、バンドヤーンテラー効果によるフェルミレベルにおける状態密度の変化が巨大磁気抵抗効果の起因に関係していることを明らかにした。Ni-Mn-In磁性形状記憶合金の巨大磁気抵抗効果をパルス強磁場下で観測した。これらの研究成果は磁性形状記憶合金の輸送現象の理解に大きく貢献する。
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