研究概要 |
希少金属であるインジウムを用いた現行の導電性透明材料に代わる新規材料として,水素化による低抵抗化処理を施した酸化亜鉛(ZnO)の実用化をめざし,低抵抗化機構の物理的背景を探り,実用化に向けた技術的方策の提供を目指した研究を行った。平成21年度は,水素化によりZnO表面が半導体から金属に転移する直接証拠を始めて実験的に捉えることに成功した。また,水素以外の水やメタノールといった分子吸着でも金属化が引き起こせることを見出した。金属化表面の電子構造解析から,金属化は吸着原子・分子からZnO表面への電荷移動と表面での二次元電子ガスの形成が原因であることを突き止めた。平成22年度は,外部刺激に脆弱である水素化ZnO表面の金属性が大気中でも保持できるように,水素化表面の保護膜の有用性について検討した。その結果,MgO薄膜が有効である事を示した。 これらの研究成果を踏まえ,水素の代わりに大気中でも安定に存在しできる有機分子薄膜により,ZnO表面の金属化が達成できるかどうかの検証を平成23年度に行った。研究では,電荷移動錯体の電荷ドナー分子の代表であるテトラチアフルバレン,および色素分子であるアクリジンオレンジベースを選び,これらの分子薄膜とZnO表面の接合界面の電子状態を検証した。その結果,テトラチアフルバレン分子はZnO表面上では電荷アクセプターとして働いたためZnOの金属化を引き起こせなかったが,アクリジンオレンジベースはZnO表面で電荷ドナーとして機能し,ZnO表面の電荷密度を増やす働きをすることを明らかにした。本研究から,双方ともに半導体である有機薄膜と酸化物を接合させることで,界面で金属状態を実現できる事が示せたことにより,新しい有機一酸化物ハイブリッド導電性透明材料ができたことになる。
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