研究第1年度においては、以下の実験研究を実施した。 1. フレスノイト系における表面結晶化形態の観察 高度配向結晶集合体の結晶成長方向に垂直な断面について、結晶配向の乱れをX線回折ロッキングカーブ測定により評価した。結晶化熱処理前にフレスノイト粉末と水とを混ぜた懸濁液による超音波表面処理(UST)を施した結晶化ガラスでは、析出結晶の配向性が向上することが知られているが、結晶配向の乱れが表面付近から内部に至るまで全域で減少することが確認された。また、側面からの偏光顕微鏡および走査型電子顕微鏡観察においても、USTによる配向の乱れの減少が認められた。透過型電子顕微鏡観察や電子後方散乱回折を利用した配向性評価や結晶化形態の観察に向けて、本研究で対象としたガラス組成について作製条件が最適化されたものであると判断した。 2. 高度配向結晶集合体に溶解性調査と単結晶ファイバーの単離 高度配向結晶化後の結晶相と残留ガラス相との組成の違いに基づき、それらの溶解度差を利用したいずれか一方の相の単離を試みた。酸溶液を用いた各種条件について溶解性調査を行った結果、結晶相あるいは残留ガラス相のいずれかが単独で溶解する条件を見出すことはできなかった。フレスノイト高度配向結晶集合体では、結晶化後においてもフレスノイト結晶相とμmスケールでの均質性が維持され、より微細なスケールでの組織が形成されているものと考えられる。 3. 結晶化形態観察に基づく定常的連続結晶成長メカニズムの解明 以上の結果のより、フレスノイトの表面結晶化による定常的連続結晶成長メカニズムの解明には、偏光顕微鏡で光学的に槻察される組織、電子顕微鏡での観察を必要とする組織の把握が必要であり、特異な組成での透明結晶化の実現は、結晶-ガラス両相の形態だけでなく、組成とそれに基づく屈折率の整合により説明可能であることが示唆された。
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