研究第3年度においては、以下の2項目を実施した。 1.フレスノイト系における表面結晶化形態の微視的観察 高配向透明結晶化ガラスの微視的形態をFIB加工による試料調製と透過型電子顕微鏡により観察した。高分解能観察によると、フレスノイト結晶子のサイズは20~50nmであり、隣接する結晶子間の結晶方位のずれは極めて小さく、高度に配向した多結晶組織を形成していることが確認された。一方で、明視野像のコントラストから200~500nm程度の柱状組織の存在が確認され、光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡による破断面形態観察で確認された柱状組織と同等のものであると判断した。この柱状組織は上記の結晶子が集合したものであるが、隣接する柱状組織間の結晶方位に着目すると、c軸については数度のずれがあり、a-b軸については方位の相関が見られなかった。この観察により明らかとなった結晶化形態は、前年度までに実施された高配向透明結晶化ガラスのc軸配向分布の評価(表面XRDおよびEBSP解析)の結果から予測した結晶化形態と矛盾しなかった。 2.結晶配向制御のメカニズム解明 表面結晶化による結晶成長過程では、成長に伴い配向分布が狭くなり分布幅0への漸近が期待できるものと考えられていたが、フレスノイト系における結晶化形態観察の結果、一定の配向分布を維持したままで定常的に一方向成長するメカニズムが支配的であったと考えられる。成長前縁付近の観察を含めて詳細な検討が必要である。また、結晶子間に残留するガラス相の存在が示唆され、結晶化ガラスの透明化と関連するその化学組成や形態の解明により、高配向透明結晶化のより高度な制御への展開が期待できる。
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