研究概要 |
シリカガラスはSiO_4四面体を単位構造とし、その連結様式が不規則な多員環(n員環(n=3~8))構造を有することが知られている。クリストバライト結晶は6員環のみから構成されることが知られており、大気中の酸素や水分によりシリカガラス表面のSi-O-Si結合が切断され、熱力学的に安定な構造を有する6員環へ再配列することで結晶核の生成が起こる。しかしながら、焼結雰囲気条件が異なる過程での構造、焼結挙動については明らかにされていない。また、焼結雰囲気の他に、ナノシリカ粒子の表面状態、言い換えれば固体/気相界面は活性であり、焼結雰囲気やガラス中の水酸基が表面への拡散機構により焼結挙動を左右すると考えられる。本年度はマイクロインプリンティングシリカガラスを焼結するための各種焼結雰囲気におけるT-T-T(温度-時間-相変態)図を作成した。更に、ラマン活性な3員環,4員環,結晶化へのトリガーとなる6員環や水酸基の焼結過程における構造変化を高温UVラマンその場観察装置を用いた観察した。真空焼結雰囲気では、3員環,4員環構造の存在割合は、焼結温度の上昇とともに双方増加する傾向を示した。1500℃以上では、3員環構造の存在割合が4員環構造よりも多いことが実験的に明らかとなった。このことは、高真空焼成雰囲気下におけるSiOの揮発反応が関与しており、6員環のみから構成される結晶構造への相転移が阻害され、非晶質構造を保ち、焼結したものと推測している。
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