研究概要 |
本年度は,新しい固溶体ナノ粒子の創製に関し,酸化チタンを基とする系として,酸化チタン-酸化スズの系について重点的に検討した。この系の相平衡状態図では,1450℃から室温までの温度域に,幅広い組成範囲にわたる2相分離の領域が広がっている。このため,熱力学的な平衡状態では,TiO_2に富んだルチル型結晶とSnO_2に富んだルチル型結晶の2相に分離し共存する。本研究では,準安定なルチル型完全固溶体結晶微粒子およびこの系の複合ナノ粒子の直接的な合成に取り組んだ。耐圧容器に装填したテフロン製の試料容器中にて,塩化スズと塩化チタンの塩を所定の組成になるように混合溶解した水溶液を酸性の水熱条件下で加熱加水分解した。その結果,TiO_2-SnO_2系の全組成領域において,ルチル型単一相の完全固溶体(全率固溶体:準安定相)を,水熱条件下の並行的加水分解により酸性水溶液からナノサイズ微粒子として直接合成した。また,合成したルチル型固溶体の相安定性と相分離挙動を明らかにした。次に,塩化スズと塩化チタンの塩を所定の組成になるように混合溶解した水溶液にアンモニア水を加えた弱塩基性の条件下で水熱処理しTiO_2-SnO_2系の結晶性微粒子の合成について検討した。その結果,Ti=0^~70mol%まではルチル型単一相の固溶体(準安定相)が弱塩基性水溶液からナノサイズ微粒子として水熱結晶化した。また,Ti=80^~90mol%組成ではルチル型とアナターゼ型結晶から成る複合ナノ粒子が生成した。紫外可視分光光度計を用いて測定した光触媒活性評価の結果として,Ti=80^~90mol%組成の複合ナノ粒子は,Sn成分を含まない酸化チタンTi=100mol%よりも優れた光触媒活性を示すことを明らかにした。
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