機能性複合材料の元素添加、熱処理に伴うナノ組織構造、元素分布、結晶粒の分布状態の変化と、機械的特性、磁気的、電気的特性との機能性変化の関係を明らかにするため、試料を作製し、特性測定、SEM、TEM観察、3DAP分析を行った。具体的な成果の例を以下に示す。 (1)Nd-Fe-B焼結磁石のマルチスケール組織解析 Nd-Fe-B系磁石は主相であるNd2Fe14BとNdリッチな粒界相から成る複合材料である。この磁石は、自動車用モーターを始め多くの製品に用いられており、特性向上のキーマテリアルとして、重要な位置づけにある。一般的に用いられる焼結磁石において、Dyを表面から粒界を介して磁石内部に拡散させることにより、省Dy化と特性向上が図られることは知られてきたが、本年度は、この粒界近傍の組織を、SEM、TEM、3DAPによって解析し、その組織や構成元素の分布明らかにした。今後、詳細な解析を進めるとともに、得られた知見を材料設計、製造プロセスにフィードバックし、更なる特性向上を目指していく。 (2)HDDRプロセスで作製されたNd-Fe-B磁石の特性向上とマルチスケール組織解析 (1)の試料より、更に微細な粒径を有するHDDR磁石は、粒径から期待される大きな保磁力が達成されておらず、その特性向上が求められている。本年度は、プラズマ焼結法を用いて試料を作製し、その特性向上を達成するとともに、マルチスケール解析から、焼結時の変形により異方性が向上したことがその原因であることを明らかにした。
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