機能性複合材料の元素添加、熱処理に伴うナノ組織構造、元素分布、結晶粒の分布状態の変化と、機械的特性、磁気的、電気的特性との機能性変化の関係を明らかにするため、SEM、TEM観察、3DAP分析を行った。また、手法の高度化にも取り組んだ。具体的な成果の例を以下に示す。 (1)Nd-Fe-B焼結磁石のマルチスケール組織解析 Nd-Fe-B系磁石は主相であるNd2Fe14BとNdリッチな粒界相から成る複合材料である。本年度も、微細組織と保磁力の関係を明らかにするため、SEM、TEM、3DAPによるマルチスケール解析を実施した。その結果、焼結磁石粒界相では、Fe、Coの強磁性元素が60%以上であることが明らかになり、その組成を有する薄膜モデル磁石では、軟磁気特性を示すことが明らかになった。従って、更なる保磁力向上には、粒界相中の非磁性元素濃度の向上が必要であることが分かった。 (2)短波長レーザーアトムプローブによる絶縁体の電界蒸発メカニズム解明 短波長レーザーアトムプローブによって、バルク絶縁体解析に成功したが、その電界蒸発メカニズムについては、全く理解されていなかった。この現象を理解するために行ったMgO試料の電界イオン顕微鏡像観察では、レーザー照射時に拡大率の増加が観察され、また、印加電圧一定で、レーザー強度を変えたアトムプローブ測定においては、質量スペクトルのピークシフトが観察された。さらに、これらの現象は短波長である紫外光で顕著になることも確認された。従って、このような絶縁体の電界蒸発は、レーザー照射による電子励起によって、試料の導電性が変化し、電圧が上昇したことに起因すると考えられる。
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