研究概要 |
強誘電材料は,コンデンサ,アクチュエータなどの電子部品に広く応用されている重要な機能材料である.チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)に代表されるこれら強誘電体材料は巨大な強誘電物性を有しておりこれらのメカニズムの解明が新規強誘電体材料,特に鉛を含まない非鉛強誘電体材料の開発に重要である.本研究では,この巨大強誘電物性機能について,その原子レベルでの構造解析と機能発現メカニズムの解明のため,高精度の第一原理計算と高精度実験を組み合わせた包括的な研究を実施し,巨大な強誘電物性のメカニズムを解析している.平成21年度は巨大強誘電物性発現メカニズムの解明に必要不可欠な「強誘電体における局所的ゆらぎ(構造・組成)解析手法の開発」を中心的課題に設定し,【第一原理計算によるラマン散乱スペクトル解析手法の開発】,につき重点的に検討を実施した.その結果,第一原理計算を用いて強誘電体材料のフォノン分散曲線を決定し,そこから強誘電体相転移に重要なΓ点のフォノン振動数,ソフトモードの有無などを議論できるようになった。この技術をCdTiO3に適用してこれまで実験的に決定されていなかったCdTiO3のフォノン分散曲線を決定し,ラマン散乱などの実験と連携してCdTiO3の強誘電体相転移およびその相転移後の強誘電相の構造を決定することができた.この成果は第一原理計算により強誘電体の相転移機構が理解できることを示しており,今後の強誘電体研究にとって重要な成果であると思われる.
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