研究概要 |
本研究の最終的な目標は,歯科インプラント術におけるチタン製人工歯根の定着性向上に資する材料の提供にある。平成21年度の概要を以下に示す。 1.微量のCO_3^<2->等を含むHPO_4^<2->水溶液を内水相とし,Mg^<2+>とCa^<2+>との水溶液を外水相とするW/O/W分散系において粒子を調製した。外水相中のMg含有比が増すにつれて,粒子表面が平滑になり,注射可能製剤への応用が期待される結果を得た。 2.複合エマルションにおける固体生成過程に関して,一方向拡散機構に基づくHAp形成モデルの構築と解釈を試みた。Ca^<2+>が油相中をHPO_4^<2->側の界面まで移動して固体を形成する機構であることを確認した。ただし,界面活性剤の種類と濃度,内水相濃度,反応温度などが拡散速度に影響を及ぼし,条件によっては外水相側界面が反応場となりうることを見出した。 3.チタン平板の表面処理条件による金属組織の制御とHAp中空粒子の付着に及ぼす影響を検討した。エッチングによってチタン表面に生成するヒロックがHAp中空粒子の大きさに匹敵するとき,付着が促進されることを見出した。 4.HApの疑似体液中での溶解析出挙動を評価し,純粋な物理化学的機構による解釈を試みた。リン酸カルシウム化合物に関して一般に知られる不一致溶解現象に関して,ネルンスト拡散層と速度境界層を考慮したモデルを提案し,チタン上へのHAp粒子の付着機構を推定した。 5.モデルインプラントとしてチタンねじ表面にHAp中空粒子を付着させ,ここに抗菌剤を含浸させ,その徐放特性を評価した。HAp中空粒子は抗菌剤の保持に有効であり,その上に形成した生分解性高分子膜によって徐放特性を制御できることを確認した。
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