研究概要 |
本研究の最終的な目標は,歯科インプラント術におけるチタン製人工歯根の定着性向上に資する材料の提供にある。平成22年度の概要を以下に示す。 1.複合エマルションにおける固体生成過程に関して,一方向拡散機構に基づくHAp形成モデルの構築と解釈を試みた。平成21年度の成果に基づいて,カルシウム溶液とリン酸溶液をゲル化し,油相を介して接触させた。各相を縦に積み重ねる形式から横に並べる形式へと変更したことにより,気泡の介在を防ぐことができた。装置断面積を大きくすることにより,生成量を増すことができた。 2.HApミクロスフィアの疑似体液および純水中での溶解析出挙動を評価し,市販品と比較した。ミクロスフィアは市販品よりも溶解速度が大きく,チタン上への付着が容易に達成できることが示唆された。純水中での溶解速度は疑似体液中でのそれよりも大きく,チタン上への付着においては純水中での操作が有利であることが示唆された。 3.チタンねじ表面にミクロスフィア層を形成した。チタンねじは絞り加工で作製されたものであり,多様な表面起伏状態を呈していたが,適切な条件におけるエッチングによってどのような部位にもミクロスフィアを多重層として付着させられることを確認した。 4.上記ミクロスフィア層に抗菌剤のモデルとなる色素水溶液を含浸させ,ポリ乳酸で被覆した。ポリ乳酸を溶解する溶媒として純トリクロロメタンおよびトリクロロメタン-シクロヘキサン溶液を使用して,その組成の効果を検討した。溶液の組成,ポリマー濃度,被膜回数などの膜形成条件によって色素水溶液の含浸量および徐放速度を制御できた。
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