研究概要 |
本研究の最終的な目標は,歯科インプラント術におけるチタン製人工歯根の定着性向上に資する材料の提供にある。平成23年度の概要を以下に示す。 1.複合エマルションにおける内水相および外水相が油相の液膜を介して接する状況を再現するためのモデル反応装置として,メチルセルロース水溶液の熱ゲル化特性を利用する垂直平行平面型装置を作製した。このとき,ゲルの機械的強度の不足を補うのと同時に,反応場となる界面の平坦性を保つために,パンチングメタル製棚段を複数枚設けた。また,ゲル化速度に対する伝熱速度の影響を考慮して,装置の材質をアクリル樹脂からステンレスに変更した。その結果,期待したようにヒドロキシアパタイト(HAp)の生成量増加が達成できた。 2.複合エマルションを用いて調製したHAp中空粒子の疑似体液および純水中における溶解挙動を評価した。このとき,撹拌方式として往復振盪による弱撹拌とディスクタービン翼による強撹拌を採用し,比較した。その結果,撹拌強度の違いが溶液中のCa/P比に影響することを見出した。チタン上にHApを生成させる際には疑似体液の流動状態が影響することが示唆された。そこで,静止場および流動場でのチタン上での析出を定量的に評価するために,微小流動反応装置を設計し,製作した。インパルス法により装置内の流動特性を評価した。 3.PLAにより被覆されたHAp中空粒子の中にモデル抗菌剤として色素水溶液を含浸させ,徐放特性を評価した。PLAクロロホルム溶液濃度およびPLA被覆回数が徐放特性に及ぼす影響を調査した。微細構造を観察し,徐放特性に及ぼす作成条件の影響を考察した。
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