研究概要 |
当該研究では,複合系における形態形成を対象として研究を展開する.その基礎として複合系を形成する各成分の基礎物性を明らかにする目的で研究を行った.生体高分子のアガロース,アルギン酸でゾル-ゲル転移と相図の決定を行った.アガロースにおいてはゾル-ゲル転移と相分離のカップリング現象を見いだした.また相分離は系にメタノールを添加することにより高温側にシフトすることが明らかとなった.これらの結果は,統計熱力学的な立場から説明した.これに対して,アルギン酸系ではアガロースとは全く質的に異なった現象を見いだした.ゲル化の条件を適切に調整することにより,得られるゲルに,螺旋やカプセルなどの形態が自発的に発現する現象を見いだした.この結果は,一次元の拡散-反応系に特徴的なものであり,現在さらに詳細な研究を行っている.第二成分である界面活性剤については,相図や構造の動的な挙動を観測するために必要な光散乱装置を構築した.従来の装置と比べて,性能的には同等ながらも,顕微鏡下で測定することを念頭に置いたものであるため,微小領域の動的な構造を議論できる.当面は,界面活性剤溶液系の相図を作成するために稼働する.合成高分子-界面活性剤系については,ゲルの形成と構造形成の関係を,共焦点検鏡法を用いて明らかにした.界面活性剤の相転移がゲル化と同時におこるため,様々な形態がゲル中に凍結されることが明らかとなった.この結果は現在定量的に解析している.上述の界面活性剤系の相図の結果とともに総合的な議論をする予定である.
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