本研究では、固体高分子形燃料電池の重要な構成要素であるセパレータを非晶質合金を用いて創製することに主眼を置いた。本研究では、粒界等の欠陥が存在しないため結晶材料と比較して優れた耐食性を示すと考えられる非晶質合金を採用し、燃料電池腐食環境下で安定な優れた耐食性を示す超高耐食性非晶質合金を探索し、得られた非晶質合金をセパレータ形状の金属芯材にコーティングした全く新しいタイプの燃料電池用セパレータの創製を目的とする。 本年度はめっき法を用いてNi基非晶質合金によるコーティングを行った。まず始めに、非晶質めっき膜としてよく知られているNi-P無電解めっきによるコーティングを試みた。金属芯材には純アルミ板を用い、ジンケート処理後にNi-P無電解めっきコーティングし、セパレータを作製した。めっき膜の組織を調べたところ、完全な非晶質状態が得られ、組成はNi-11mass%Pであった。次にこのセパレータを2枚使用して単セルを組み、発電特性を調べた。その結果、I-V測定を繰り返すと次第に性能が劣化した。これはNi-P膜では耐食性があまり高くなかったからと判断し、次に、高耐食性元素Crを添加したNi-Cr-P非晶質合金めっき膜の作製~セパレータの試作を行った。Ni-Cr-P非晶質合金めっき膜は電解めっきにより作製し、芯材には銅板を使用し、ジンゲート処理を省いた。その結果得られたNi-Cr-P非晶質合金めっき膜は非晶質状態、組成はNi-25.5mass%Cr-14.4mass%Pであった。このセパレータを2枚使用して単セルを組み、発電特性を調べたところ、Ni-Pめっき被覆セパレータよりも格段にI-V特性が優れており、非晶質合金めっき膜被覆燃料電池セパレータが実現可能であることを示すことが出来た。
|