研究概要 |
種々の官能基を含んだ水溶液中でTiを陽極酸化することにより,化学的性質の異なるTiO_2皮膜を作製し,これを動物埋植試験に供することにより,骨伝導性の高いTiO_2皮膜作製条件を決定するとともに,TiO_2皮膜表面の化学的性質と骨伝導性との相関関係を明らかにすることを目的とした.使用した水溶液種として,本年度は,(1)りん酸,(2)酢酸,(3)硝酸の3種に限定し,これらの水溶液中で,表面粗さRa<0.1μmで,およそ100nm程度の膜厚を有するTiO_2(アナターゼあるいはルチル)皮膜を主に作製し,試料表面の化学的特性評価(静的水滴接触角測定,37℃,PBS(-)中自然電位測定,含有官能基の定性分析,たんぱく質吸着量測定)を行うとともに,ラット脛骨埋植試験によるin vivo評価も行った.その結果,高濃度りん酸ならびに高濃度酢酸水溶液中でTiを陽極酸化すると,皮膜にりん酸イオンあるいは酢酸(イオン)が混入することによって,結晶性の低いアナターゼ皮膜が生成することが分かった.さらに,硝酸水溶液中陽極酸化では,条件を選択することにより皮膜に硝酸イオンが混入し,低結晶性のルチル皮膜が生成することも分かった.たんぱく質吸着能を有するリン酸中にて陽極酸化して作製した低結晶性のTiO_2コーティング材が,極めて高い骨伝導性を示した.たんぱく質の有するアミノ基と結合することによって高い吸着能を示すと考えられたカルボキシル基を含有する酢酸水溶液中で作製した低結晶性の皮膜ならびに,これまで骨伝導性が全く調べられてこなかった低結晶性のルチル皮膜についても,今後,さらなる検討を行う必要がある.
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