22年度までの研究から、多孔体人工骨の気孔径は大きい方が骨侵入にとって有利であることが判明した。23年度はミクロンサイズの微細構造の影響およびさらに微細のサブミクロンサイズの表面構造が骨侵入に及ぼす影響の詳細を調査した。 インプラントは選択的溶融法を用い、直径3.3mm長さ15mmの円柱内に500、600、900、1200μmの4つの径の孔を長軸方向に作成したものを用いた。骨侵入の指標としてPercent Bone Formation Length (PBFL)、インプラントの中に侵入した骨の総量をそれぞれの骨孔において計測し、その値をTotal Bone Formation Volume (TBFV)として4つの孔で比較した。サブミクロンサイズの表面構造の制御にはアルカリ加熱処理を用いた。骨内でのバイオロジーとして犬・兎での骨伝導、骨外でのバイオロジーとして犬での骨誘導を調査した。 骨伝導(犬):PBFLは4群間で有意差を認めず、TBFVは1200μmの径で有意に高い値となった。表面処理を行った群は4群ともに非処理群に比べ有意に高い値となった。 骨伝導(兎):PBFLは4群間で有意差を認めず、TBFVは1200μmの径で有意に高い値となった。表面処理を行った群は4群ともに非処理群に比べ有意に高い値となった。 骨誘導(犬):表面処理を行わない群では骨誘導は認められず、表面処理を行った群ではPBFLは500μmの径で有意に高い値となり、周囲から5mmの部位で高い骨誘導を認めた。 以上の結果から骨伝導は動物種に関わらず、1200μmの径が骨侵入には適しており、骨誘導は500μmの径が骨形成には適しており、周囲から5mmほど深部が骨誘導に適した環境となり、人工骨表面のサブミクロンサイズの微細構造は骨バイオロジーにとって重要な役割を果たすことが判明した。
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