研究課題
下顎骨における生体アパタイト(BAp)結晶の配向性は、in vivo応力分布の変化や骨系細胞挙動に対して極めて敏感に変化する骨質指標である。特に咀嚼荷重は歯根直下部での配向性を制御する重要な因子であることをラット咀嚼障害モデルにより明らかにしてきた。咀嚼の有無によるBAp配向性の変化を明らかにすることは歯科インプラントを検討するうえで重要であり、適正な咀嚼障害モデルの作製、選択は極めて重要である。今年度はビーグル犬を用いた抜歯による咀嚼障害モデルと、新たな手法として、破骨細胞欠損による骨吸収不全を呈するop/opマウスを用いた歯牙形成・萌出不全による咀嚼障害モデルについて、BAp配向化に対するin vivo応力分布、細胞挙動の影響を評価した。その結果、ビーグル犬を用いた咀嚼障害モデルでは捕食部と咀嚼部における骨密度の不連続性が抜歯後わずか3ヵ月後には消失し、BAp配向性に対する咀嚼の重要性が示された。正常な場合、咀嚼の影響を受ける歯根直下の局所領域においては近遠心方向のBAp配向の低減にともなって咀嚼方向への配向化が認められた。咀嚼障害の場合、近遠心方向への一軸配向へと変化した。一方、破骨細胞欠損したop/opマウス下顎骨の体積骨密度は有意に低かった。配向性は、歯根の有無に関わらず正常な対照群では基本的には近遠心に沿った一軸配向性を示し、咀嚼荷重の影響を受ける歯根直下のみ咀嚼方向への配向化形成の結果、近遠心への配向性は有意に低下した。一方op/opマウスでは、近遠心への配向度合は対照群に比べて低く、歯根直下においても咀嚼の影響は受けるものの、配向性低下の度合は小さく、咀嚼荷重やそれに対するレスポンスの差異が示された。
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Oral Science International
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