CuMoO_4は圧力印加による「ピエゾクロミズム」が報告されているが、大型装置を用いた外部からの圧力印加ではなく結晶内部において圧力を誘起させることによるクロミズムの観測を目的とした。具体的にはCuMo_O4のMo^<6+>をイオン半径が大きいW^<6+>に置換したCuMo_<1-x>W_xO_4を合成することにより、結晶内部に自発的に圧力(ケミカルプレッシャー)を誘起させることに成功し、構造相転移温度が大きく高温側へ移動することを磁化率の温度依存性の測定結果から明確に確認した。また、低温での磁気的構造を解明するために磁性イオンであるCu^<2+>(S=1/2)を非磁性イオンであるZn^<2+>(S=0)に置換したCu_<1-y>Zn_yMoO_4を合成した。磁化率の広範な温度領域での測定の結果、置換量が増加させると構造相転移温度が低温側へ移動することが明らかとなった。この原因はZnMoO_4が低温まで構造相転移することなく本来のCuMoO_4の構造相転移を阻害しているためだと考えられる。 以上のようにCuMoO_4をW^<6+>とZn^<2+>を用いて置換することにより、低温から室温までクロミズムの起源である構造相転移温度を自由に制御することに成功した。この広範な温度領域での自在なクロミズム制御は、CuMoO_4系が我々の日常生活において有効に作用するクロミズム磁気センサーとしての実用化に向けた重要な第一歩として大いに期待される。 CuMoO_4の単結晶試料による磁化率、強磁場磁化測定を開始した。その結果、構造相転移温度において体積が約13%縮小する効果に起因する粒径に大きく依存した特異な磁気的性質を観測した。また、走査電子顕微鏡(Scaming Electron Microscope : SEM)による粒径の直接観測も実施し、温度履歴が磁気的性質に重要な影響を及ぼしている可能性を示唆した観測結果が得られている。
|