研究概要 |
我々は,(001)SrTiO_3(STO)基板上に,ペロブスカイト型酸化物Ba(Fe_0.2Zr_0.8)O_3-δ(BFZO)をSrTiO_3基板上に単結晶成長させることに成功し,それらが室温強磁性誘電体であることを明らかにしてきた,本研究ではこの物質をエレクトロニクス素子応用へと展開するため,Si単結晶基板上へBFZO薄膜の単結晶成長を可能にするような界面修飾層について検討を行うことを目的とした.界面修飾層としてはSrTiO_3(STO)やYSZなどを検討した. Si基板上に製膜したSTO, BFZO薄膜は共に多結晶化していることがXRDの結果より明らかになった.しかしながら,その磁化率は,Si基板直上に製膜したBFZO薄膜の磁化率よりも3倍程度大きくなっていることが確認された.断面および膜面TEM像の詳細な解析を行った所,STOをバッファ層に用いたSi基板上のBFZO薄膜は,巨視的には多結晶であるが,大きく粒成長したSTO粒上にBFZO薄膜が局所的に単結晶成長することによって格子歪みが導入され,その結果としてFe^4+イオンが増加し強磁性磁気秩序の増大がもたらされたことが明らかになった.また,放射光を用いたXPS測定により,Fe^4+イオンの存在を明らかにした. さらに,8mol%Y_2O_3-doped ZrO_2(8YSZ)をバッファ層としてSi基板上に合成し,これをを単結品成長させる成長条件を解明する事に成功した.一方で,8YSZ上に製膜したBFZO薄膜はいずれもランダム成長していることが確認された.この結果は,YSZの格子定数とBFZOの格子定数に20%以上のミスフィットが存在するため,STO基板上にBFZOを製膜する場合と比べ,基板温度や酸素分圧などのパラメータが大きく変化したことによるものと推察された.BFZO薄膜の合成条件の更なる検討が必要である.
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