研究概要 |
本年度の設定目標はSi基板上に単結晶成長させたBa(Fe, Zr)O <3-δ>喝薄膜の素子応用を目指した基礎的要素機能の検討にあった.前年度に取り組んだヘテロ界面制御方法の検討を進めるなかで,従来の知見よりもっともSi基板直上への単結晶成長膜が得られやすいと見込まれた,Y-stabilized ZrO_2(YSZ)をはじめTiNやSrTiO_3等の単膜,CeO_2/YSZの2層膜などを界面修飾層として,磁性誘電体薄膜を結晶成長させる取り組みをすすめた.その結果,8mol%Y_2O_3-doped ZrO_2を界面修飾層として結晶成長させることや, (001)CeO_2//(001)YSZ//(001)Si,<100>CeO_2//<100>YSZ//<100>Siなる方位関係を持つCeO_2/YSZの2層界面修飾層の成長に成功した.しかしながら結果的には,どのように界面修飾層を選択し,成長条件を制御しても,それらに整合成長した磁性誘電体単結晶膜を合成することはできず,SrTio_3基板上に単結晶成長した薄膜に対して,磁気特性では約4割の飽和磁化を持つBa(Fe,Zr)O_3-δ薄膜が作製できるにとどまった. これらを打開するため,成膜後のポストプロセスを用いた酸素欠損量の制御すなわち磁性と誘電性の制御を行う取組を新たに展開した.対象とした試料は,Ba(Fe,Zr)O_<3-δ>同様すでに代表者らが多くの取組を進めているBa(Fe,Mn)O_3-δ系薄膜材料とした.その結果,様々なエネルギー域をもつイオンビームを照射することによって,酸素欠損量を意図的に増減させることで,磁性,誘電性を多様に変化させることに成功した.これらの結果は,膜の成膜時にはSi基板上へのエピタキシャル成長が可能な成膜条件で作製し,ポストプロセスで酸素欠損量を制御することによって特性の最適化を図る,新たな合成プロセスの可能性を示唆している。
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