本研究は「光学検知水素センサー用材料の開発とそのモジュール化」および「室温作動、100ppmオーダーの水素検出の実現」と「電気抵抗変化を利用した水素濃度検知センサーの構築」を最終目的とし、これらを実現するために構造と物性の相関性を明らかとすることを基礎の目的とするものであり、以下に研究の対象を示す。 1.アモルファスから結晶までの構造の制御 2.結晶構造の制御 3.薄膜の形態制御 4.金属触媒微粒子の形状制御ならびに分散膜の構造制御 当該年度は主にPtナノ微粒子の合成と酸化タングステン薄膜の作製ならびにPt微粒子分散酸化タングステン薄膜の作製を進めた。その結果、以下に示す知見を得られた。 (1)酸化タングステン薄膜はゾルーゲル法から合成する際、低温ではW=O二重結合を構造中に含み、この二重結合は熱処理により消失し、W-O-W構造を構築する。 (2)W=O結合を有する薄膜ではクロミック現象による色変化に乏しく、W-O-W結合が発達するに伴いクロミック現象が顕著になること。 (3)クロミック現象はW原子の電子状態が強く反映され、WO3構造が構築されていれば微結晶やアモルファス構造であったとしてもクロミック現象を発現すること (4)Ptイオン含有のタングステン前駆体溶液から薄膜を作製した場合、Ptイオンを含有していない前駆体溶液から作製した薄膜と結晶構造が異なること。 (5)酸化タングステン薄膜中の1価のカチオンの拡散係数はアモルファス構造が最も高く、結晶化度の向上に伴い減少するが、W=O結合を多く含有するアモルファス構造では着色サイトが少ないために着色に伴う色変化が乏しいこと (6)電気伝導度変化から100ppm程度の低濃度水素を検知することが可能であるが、加熱により抵抗が増加するという新たな現象を発見したことなどを明らかとした
|