「光学検知水素センサー用材料の開発とそのモジュール化」および「室温 作動、100ppmオーダーの水素検出の実現」と「電気抵抗変化を利用した水素濃度検知センサーの構築」を行うために、構造と物性の相関性を明らかとすることを目的としている。 Ptナノ微粒子坦持WO3薄膜の一価のカチオンを用いた電気化学測定の結果から、アモルファスや結晶化度の低いWO3へのイオンの拡散量が多く、結晶化度の高いWO3は拡散速度が速いが挿入量が少ない。この結果から400℃程度の熱処理により得られた結晶化度の低い薄膜のセンシング能が高いことが実証された。光学的、電気的性質を用いた水素センシングでは薄膜内への水素の挿入反応と大気中の酸素による薄膜からの水素の引き抜き反応が同時に生じるため、これらの反応の平衡時の物性を用いた検量線は非線形となるが、酸素分圧と水素分圧を考慮した式を用いることで線形とすることが可能となり、低濃度から高濃度までのセンシングと定量を可能とすることができた。また、電気的な水素センシングにおいては酸素と水素の分圧比と電気伝導度の相関性から大気中においては水素濃度100ppmから1.8%までを定量的に測定することが可能であることを明らかとした。光学的性質を用いたセンシングでは500ppm程度から5%までの定量を、電気的性質を用いたセンシングでは100ppmから1.8%までの定量を可能とし、これら二つのセンシング手法を組み合わせることにより広範囲の水素濃度検知センサーとすることが可能となった。1000ppm未満の低濃度では数秒、1000pp田以上の高濃度ではコンマ数秒で検知が可能であり、高速、高精度シナジーセンサーを実現できたと言える。
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