研究概要 |
本研究は,材料割れが問題となっている水素分離膜の体積変化時の歪集中や材料疲労と固溶水素濃度との関係をアコースティック・エミッション(AE)ウェーブレット解析法で調べ,脆化機構を解明して水素透過能と耐水素脆性および耐久性を兼ね備えた膜合金の設計・評価指針を得ることを目的としている。平成21年度は,「水素分離膜AEその場膜破壊検出装置の構築と変形・破壊過程のAEウェーブレット解析手法の確立」を主目標として研究を進めた。得られた結果や知見を以下に要約する。 1.AEセンサ,プリアンプ,ディスクリミネータで構成されるアコースティック・エミッション(AE)その場膜破壊検出装置を設計・製作して水素透過ハイブリッドその場膜強度測定システムに付加した。 2.水素透過試験時の供給・透過ガスの四重極質量分析計によるin-situガス分析,拡散係数測定法を検討した。また,ガス分離性能およびガス分析機能の組込が完了した。 3.ニオブ(Nb)あるいはNb合金の573K~773Kにおける水素圧力-組成-等温線(PCT曲線)を求め,曲線上の各固溶水素濃度状態においてin-situ小型パンチ(SP)試験ならびにAE解析を行い,水素分離膜の変形・破壊過程のAE解析手法を確立した。 上記の検討の結果,AE原波形のウェーブレット解析あるいは短時間フーリエ変換による時間-周波数解析を用いた膜合金の変形・破壊時の特徴が抽出可能となった。また,純Nbや純バナジウム(V),およびそれらの合金の耐水素脆性についての限界固溶水素濃度を系統的に把握することに成功し,この観点で水素透過能と耐水素脆性においてパフォーマンス・チューニングされた合金膜を創製するための基礎的な設計情報を得ることが出来た。
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