本研究課題では、大気中で安定な導電性高分子であるポリチオフェン系を対象として、ポリチオフェン分子間の導電機構を支配する因子を解明し、この導電機構が熱電特性(ゼーベック係数、導電率)に与える影響を基礎的に明らかにすることを目的とする。平成22年度は、側鎖基および末端基としてアルキル基を配位させたポリアルキルチオフェンを有機合成し、導電機構を評価して熱電特性との関係を検討した。以下の結果が得られた。 1)88~400Kの温度範囲において、いずれも最近接間ホッピングを示し、温度上昇と共に電気伝導率が飛躍的に大きくなる傾向を示す。電解重合で合成した側鎖を有しないポリチオフェンがバリアブルレンジホッピングを示すのとは対照的といえる。 2)最近接間ホッピングとバリアプルレンジホッピングを比較すると、室温以上の温度域では、最近接間ホッピングの方が、ゼーベック係数が大きくなる傾向を示した。 3)最近接間ホッピングでは、ホッピングサイト間の距離によってキャリアがエネルギーフィルタリングされ、その結果、ゼーベック係数が大きくなったと考えられる。
|