研究概要 |
小型・軽量なFBG超音波検出システムの開発を行うことを目的として研究を進め、最終年度までにファイバリングレーザからなるシステムを用いて、光アンプのもつ微小な光利得の波長依存性を利用して、超音波が及ぼす微小なブラッグ波長変化を高感度に検出できることを明らかにした。そして同システムの超音波検出に関する基礎的特性を評価した。しかしながら振動環境下においてノイズが混入する問題点があることが分かった。そこで最終年度は振動環境下におけるノイズ混入を低減するため、システム改良を行い、実用環境下において超音波検出が可能なシステムへと完成度を高めていくことを目的とし、以下の2つの研究課題を遂行した。 (1)振動環境下におけるノイズ低減 振動環境におけるノイズの混入は光ファイバの偏波状態の変動が原因と考え、光ファイバを全て偏波保持にした。偏波保持光ファイバを利用することにより振動の影響を抑制することができた。しかしながら振動環境によるノイズ混入の最大の原因は光ファイバの接合部にあることが分かった。これまで光ファイバ同士をコネクタを用いて接続するメカニカルスプライスを用いてきたが、スプライス部の脱着や取り付け状況によりセンサ出力が大きく変動することが確認された。光ファイバを融着接合することによりセンサ出力の変動の問題が解決された。またFBGセンサを偏波保持ファイバにした場合、反射ピークが二つ現れ、超音波応答に対するS/N比は偏波無依存型のFBGセンサよりも低かった。FBGセンサは偏波無依存ファイバの利用が超音波検出においては有利であることを明らかにした。 (2)様々な適用先の模索 ファイバ・レーザシステムを超音波検出のみでなく、様々な分野に適用できるかどうかについて模索することを目的に、民間の非破壊検査企業と共同で液体水素雰囲気で稼働する機構品の振動計測をFBGセンサシステムを用いて行った。この試験では最大回転速度30,000rpmのモータ軸受け部の振動計測を目的に、FBGセンサを軸受け部近傍に接着して回転数を変化させたときにFBGが計測する振動を計測した。その結果、FBGセンサが計測した動的ひずみの最大成分強度が現れる周波数がモータ回転数と良く一致することが明らかになった。回転機械では軸受け部のミスアライメントでは回転数よりも低周波数に大きなノイズが、ベアリング破損時には高周波ノイズが現れることが知られている。このことからFBGセンサを用いてモータなどの回転機械の振動モニタリングが可能であると考えられる。
|