研究概要 |
本年度は1.プラズマ形成条件2.基板の種類と基板温度3.複合および二層膜の作製の3点に関して検討および実験を行った. 1.アルコキシド溶液挿入速度を固定(0.1ml min^<-1>),基板温度は実験中500-800℃範囲とし,溶液導入ノズル形状,プラズマ形成ガスの圧力の最適値を検討した.XRDによる生成相とSEMによる表面および断面の微細構造観察から結晶性と膜の緻密さを最適化の指標とした.どの組成のアルコキシド溶液を用いた場合も,ノズル形状はφ0.5としたときもっとも緻密な膜が得られた.熱プラズマのAr/N_2/H_2混合気体(4.5/0-2/0-2L min^<-1>)中で窒素濃度によって,膜中の窒化物含有量を容易に制御できた. 2.シリコン基板を用いて最適な条件を検討後,WC-Co超硬合金基板(住電精密(株)提供)に製膜を行い,微構造観察と耐摩耗性観察を行った.基板温度を高くすると膜の結晶性が向上する傾向が見られたが,超硬合金基板からコバルト成分が析出し,膜と反応することが認められたため,基板温度は700℃程度に抑える必要があると考えられた.基板温度が高すぎる場合は切削性能も低下したので,耐摩耗性向上のためには基板温度を高精度で制御することが重要であると確認された. 3.TiBCN複合膜およびTiN/AlNとTiN/SiC二層膜の作製をそれぞれ前駆体溶液の導入パターンを調整することで複合膜の作製が行えることが明らかとなった.前駆体にアルコキシド溶液を用いているため,導入ポンプを制御するだけで容易に作製可能となった. これら実験に加えて関連研究として窒化物の生成モデルを考察するためGa_2O_3のNH_3による窒化反応の検討,およびTiN,AlN,SiC,Si_3N_4化合物の薄膜化による効果を検討するため,比較としてバルク体にしたときの機械的特性の基礎的データを収集するための実験もおこなった.
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