研究概要 |
放電加工法は,異なる3つの現象,(1)放電パルス幅(ns,μs),(2)溶融表面の凝固現象(ms),(3)気泡の発生と消滅(s)が同時に発生し,しかもそれぞれの時間スケールが大きく異なる。これらの現象を個別に制御することは極めて困難であり,このことが不安定な放電状態を引き起こすと考えられる。本研究では,凝固現象に着目し,凝固中の材料の盛り上がり過程が短絡を引き起こす原因となるかを検討した。また,微細軸の機上成形やセラミックスなどの特殊な材料の微細形状創成放電加工を実施した。 これまで盛り上がりの計測が可能な放電加工機を製作し,放電発生から十数ms後に40μmに及ぶ盛り上がり現象を確認した。しかしながら,極間距離設定における電気的な接触検知,電極と加工物の並行度に問題があり,その計測精度は十分とはいえない結果となった。並行度については,機上での走査放電加工による電極成形により,加工物との並行度を確保する手法を確立した。今後は,その場観察等を含めた極間距離の設定精度の向上を図る。短絡が発生しにくい材料として,仕事関数の小さい亜鉛合金が有効であることが明らかとなった。亜鉛合金は加工条件によっては,亜鉛合金のみが消耗する場合がある。これを利用して,電極成形用プレートと加工物にそれぞれに電源を配置した複合電源による電極成形・微細穴同時加工法を提案した。この方法により微細穴の連続加工が可能となった。また,絶縁性セラミックスに対しても,この方法が有効であることが確認され,絶縁性セラミックスの多数穴加工へと展開できる可能性が示された。
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