研究概要 |
環境調和性の高いプロセス制御型材料加工研究の一環として、ねじり加工を利用した素形材の調製による低温・高速塑性加工プロセスを開発することが本研究の目的である。すなわち、加工荷重の効果的な低減をもたらすねじり加工の最適条件を確立する。また、ねじりと転造によるせん断変形のシナジー効果によって微細でランダムな結晶組織を作り込み、高強度と高靭性,良好な表面性状と耐食性を併せ持つマグネシウム合金形材の創製を目指した。平成21年度および22年度の成果に基づき、平成23年度はAZ31Bマグネシウム合金の室温でのねじ転造を実現するねじり調製および転造の条件の最適化と共に、得られた形材やねじの特性評価を行った。ねじり調製により導入されるせん断ひずみ量が高いほど、結晶粒が微細化し、3回転の一方向ねじりを与えた試料では、その平均結晶粒径は9μmまで微細化することを見出した。また、3回転の一方向ねじり材では、柱面の回折角度が低下し、錐面や底面などの押出し材や均質化処理材では見られない回折ピークを確認した。すなわち、ねじり加工を施すことにより結晶方位がランダム化し、押出しによる異方性が緩和された。最適なねじり調製および転造の条件にて作製したM8ねじには、ねじの山頂部や谷底部には欠けや割れは見られず、JISによる強度区分を十分に満たすことをねじによる引張試験にて確認した。以上のように、最適なねじり調製を施すことにより、AZ31Bマグネシウム合金による室温でのねじ転造に成功し、良好なM8ねじが得られたことが平成23年度における最大の成果である。
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