研究概要 |
金属ガラスは従来の結晶性金属材料では得難い種々の特性や機能を有する新素材であり,活発な材料開発が進められているが,非平衡状態であるため,温度上昇を伴うプロセスにより結晶化しようとする駆動力が常に作用している.ほとんどの場合,結晶化すると金属ガラスの特異な特性や機能は失われる.従って,金属ガラスを接合するには結晶化を防止しながら界面を創出するとともに,接合プロセスにおいてどれほど熱的安定性が低下するのかを把握せねばならない.本研究では,低温接合法のひとつである超音波接合法を利用してジルコニウム基金属ガラスの同種材ならびに異種材接合界面を創出し,その結晶化挙動解明と熱的安定性評価法確立に取り組んだ. ジルコニウム基金属ガラスの同種材超音波接合では,接合面を湿式洗浄直後に接合することにより,強固な接合継手を得ることができる.接合界面には結晶化組織は形成されないが,接合面を覆っていたと考えられる酸化膜の微細な破片が接合界面に介在した組織となっている.接合中の界面近傍の温度履歴は,ガラス遷移温度をわずかに超える温度に達するが,この温度を超えている時間はわずかであり,その後,超音波を印加し続けても接合界面の温度は低下する.接合界面近傍の熱的安定性を熱分析により調べた結果,超音波接合により作製した接合界面近傍ではほとんど熱的安定性の低下が見られないことを明らかにした.一方,ジルコニウム基金属ガラスを高純度アルミニウムに対して接合すると,接合界面の温度履歴は400Kを超えることがない.このことから金属ガラスの熱的安定性は低下しないことが期待されるが,熱分析すると,結晶化温度が大きく低下していることを明らかにした.接合部近傍をガラス遷移温度を超える温度で結晶化しない程度に熱処理した界面組織を解析すると層状の化合物相が形成され,界面に近接した金属ガラスに組成揺らぎが見られることを明らかにした.
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