研究概要 |
化合物半導体の中でも環境汚染物質を含まないZnTeはワイドバンドギャップを有する直接遷移型半導体であり、高輝度緑色発光素子等の光電変換材料として注目されている。ZnTeの作製には結晶成長法や凝固法等があるが、水溶液からの電析法によりZnTeの薄膜を得た事例は少なく、電析条件が半導体物性に及ぼす影響は不明確である。本研究では、電解浴から非晶質または微結晶ZnTe膜を電析させた後、熱処理することで結晶質ZnTe薄膜を得ることを目的とした。Znの析出電位付近である-0.8~-1.1Vを陰極電位領域とし、定電位電解法により電析膜を作製した。Zn:Te=1:1の化学量論組成が得られる陰極電位で2時間電析した試料をArガス雰囲気下で熱処理した。熱処理条件は温度をZnの融点(419℃)以下である380~410℃、時間を5時間とした。熱処理後の試料の構成相をXRD法により同定した。-0.8~-1.1Vの陰極電位領域で作製した試料の合金組成に及ぼす陰極電位の影響を調査した結果、陰極電位が卑な領域で得られた試料はZn含有率が増加する傾向にあることが判明した。-0.8Vの陰極電位で作製した試料はZn含有率が51.9%で、Zn:Te=1:1に近い値であった。よって、陰極電位-0.8Vを最適電析電位とした。-0.8Vで電析させた試料の熱処理前および熱処理(410℃)後のXRDパターンを調査した結果、熱処理前ではZnTe相の明確な回折ピークは見られなかったが、熱処理後は2θ=25.3,41.8,49.5に明確なZnTe相の回折ピークが見られた。また、熱処理前の電析膜は黒色を示していたが、熱処理後は単体のZnTe特有の赤褐色に変化したのを確認できた。以上のことより、非晶質または微結晶状態の電析ZnTe膜を熱処理することで結晶質ZnTe薄膜を合成できることが判明した。
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