研究概要 |
爆薬により金属を接合する技術である「爆発圧着」は,高い接合強度が得られるため,曲げ加工などを行っても接合界面での剥離を生じにくく,また接合可能な材料の組合せが幅広いなどのメリットをもつ。さらに,母材に対する合わせ材の厚さを薄くしていくと,一種のコーティングと見なせるため,一層の用途拡大を見込むことができる。この場合,耐食性や耐摩耗性などが求められる合わせ材の厚さが薄いほど,素材や経費の節減に繋がる一方で,爆薬の爆轟により合わせ材が破損して接合そのものが達成できなくなるという欠点もある。本研究では,金属板(支持板)に箔材を貼り付けて一体化したものを合わせ材として用い,これを従来の爆発圧着と同様に母材に高速で衝突させて接合し,その後支持板を取り外して,箔材と母材の接合を完了する「転写型コーティング技術」の確立を目指している。本年度は,支持板に厚さ2mmのAl板,箔材にAl箔とTi箔,母材に厚さ2~5mmの炭素鋼板とステンレス鋼板を用いてコーティングを試みた。その結果,厚さ25μmの箔材では成功に至らなかったが,50μmまでに対しては技術的なノウハウを蓄積することができた。 また,母材表面部で金属間化合物を合成して工業的に利用することを目的として,得られた試料を熱処理し,固相状態または固液状態における界面反応を調査した。AV高炭素鋼系では(1)1000℃に加熱した場合FeAl/α-Fe界面にはクラックやボイドが生じて非常に脆弱になること,(2)50μmのAl箔材を使用することで耐酸化性や耐食性に優れた表面層を得ることができること,TVフェライト系ステンレス鋼系では(3)Ti箔の厚さを100μmまで薄くした場合,接合界面の構成相が変化すること,(4)100μmの熱処理材ではTi側表面が硬化され,また耐食性も良好となることなどを明らかにした。
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