研究概要 |
アモルファス合金の中でも安定な過冷却液相域を有するバルク金属ガラス(BMG)は,非常に優れた機能性,機械的特性を有するため工業用材料として大いに期待されている.中でも高強度かつ低ヤング率という特性は,ステンレス鋼のような汎用構造材料と組み合わせることでワイドレンジ圧力センサやコリオリ流量計などのデバイスへの適用が考えられている.マイクロ抵抗スポット溶接は,冷却速度が大きいプロセスであるため,溶接時の熱履歴にともなうBMGの結晶化を避けることのできるプロセスである.しかしながら,実際に圧力センサの様なデバイスを作成しようとした場合,スポット溶接ではなく,連続溶接が必要となる.そこで本研究では,BMGとSUS304のマイクロ抵抗シーム溶接およびマイクロ抵抗スポット溶接を行い,その強度評価を行い,接合メカニズムを詳細に調べた. BMG同士およびBMG/SUS304異材接溶接どちらにおいてもBMGのアモルファス構造をほとんど損なうことなくシーム溶接が可能であった.接合部においてSUS304が大きく溶融すると,脆弱な金属間化合物ナゲットが生成し,継手強度は低下した.SUS304の溶融を溶接界面のみに抑制することで良好な継手が得られた.この接合界面は以下の3種類に大別できた.最外周部に小さな隙間が観察される界面(界面A),過冷却あるいは液相状態のBMGと固相状態のSUS304が接触してできた界面(界面B),そして.界面近傍のSUS304がわずかに溶融し,溶融状態のBMGと反応性生成物を形成した界面(界面C),の3種類である.これらの界面の透過型電子顕微鏡観察の結果から,溶接中の界面の温度が明らかになった. これらの結果から金属ガラスと汎用構造用金属を組み合わせた高機能デバイスの作製が可能であることが示された.
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