現在様々な材料開発が行なわれている中で、カーボンナノチューブなどナノスケール物質の材料開発が進んでいる。材料開発では使用する材料の構造と各種物性を知る必要がある。ナノ材料の特性を調べるためには従来型のマクロスケールの材料試験に代わり、ナノスケールでの材料試験が可能な新規実験装置が必要となる。本研究では昨年度までに、ナノ・レベルの材料を観察しながら引張・圧縮試験を可能にするマニピュレータを備えた電子顕微鏡用の試料ホルダーを製作し、その性能評価及び集束イオンビーム加工観察装置(FIB)への導入と試料の微細加工について取り組んだ。本年度はマニピュレータ付き試料ホルダーをFIB及び走査型電子顕微鏡(SEM)に導入し、ナノ材料試験システムとして機能させることを目的として実験を行った。マニピュレータ付き試料ホルダーにタングステンの線材又は箔状の試料を組み込み、FIB内でガリウムイオン照射により試験片を微少サイズに加工し、引張試験を試みた。本実験で応力-歪み曲線のデータが取得できた。引張強さは従来報告されているデータとほぼ一致する値が得られたことから、材料試験システムとして機能していることを確認した。破断面の組織観察を行ったが、FIBではイオンビームによる表面組織への照射損傷が生じるため詳細な観察データが得られなかった。そこで、SEM内での引張試験及び観察が可能な試料ホルダー用ポートを新規に作製してSEMに組み込み、実験を試みた。試料ホルダーの位置調整の結果、破断の様子をSEM観察しながら引張試験が行え、破断組織の観察も容易に行うことができた。本研究の実施により、マニピュレータ付き試料ホルダーをFIB、SEM内で使用しナノスケール材料試験システムとして運用できることを確認した。本研究では非晶質炭素薄膜の引張試験による物性評価についても検討を行い、定量的なデータの計測に成功した。
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