本研究の目的は、新しい塑性加工プロセスとして"レーザー衝撃法"を提唱し、この手法を用いてこれまで容易に成し得なかった塑性加工を行い、かっ微細組織形成過程を定量的に解明することである。高強度レーザーを物質に照射すると、アブレーション時の反跳力によって物質表面に衝撃波が駆動され、固体内を伝播する。このレーザー衝撃波によって、従来法では困難なCuやAlの変形双晶形成が可能である。レーザー衝撃プロセスによって高密度格子欠陥の導入が容易に可能であるが、レーザー衝撃プロセスによる微細組織形成過程は定量的に調べられておらず、理解されていない。今年度は、空気中でアルミニウムにフェムト秒レーザーを照射し、XRD法、微小押し込み硬さ試験によって、照射部近傍の格子面間隔および硬度を測定した。ターゲット材料として、鏡面研磨した純アルミニウム(純度99.999%)を用いた。空気中で、波長800nm、パルス幅130fsのフェムト秒レーザーパルスを焦点距離70mmの平凸レンズで試料表面に集光し、XRD測定用試料に対して、パルスエネルギー2.7mJ、照射径80μm、照射間隔80μm、硬さ試験用試料に対して、パルスエネルギー0.7mJ、照射径70μm照射間隔1.75μmの条件で照射した。照射部表層に対して、ディフラクトメーター法と斜入射法によるXRD測定を行い、照射部近傍の断面に対して、ナノインデンテーション法による微小押し込み硬さ試験を行った。硬さ試験の結果、照射部から約15μmまで硬化しており、最高硬度は母材の硬度の約8.7倍であることがわかった。また、XRD測定の結果、ディフラクトメーター法、斜入射法の両方で、レーザー未照射のものよりピークが高角側にあらわれた。硬化の原因として、加工硬化や結晶粒微細化が考えられる。
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