研究課題
本研究の目的は、新しい塑性加工プロセスとして"レーザー衝撃法"を提唱し、この手法を用いてこれまで容易に成し得なかった塑性加工を行い、かつ微細組織形成過程を定量的に解明することである。高強度レーザーを物質に照射すると、アブレーション時の反跳力によって物質表面に衝撃波が駆動され、固体内を伝播する。このレーザー衝撃波によって、従来法では困難なCuやAlの変形双晶形成が可能である。レーザー衝撃プロセスによって高密度格子欠陥の導入が容易に可能であるが、レーザー衝撃プロセスによる微細組織形成過程は定量的に調べられておらず、理解されていない。今年度は、純鉄表層のレーザー衝撃誘起加工硬化を試みた。レーザー照射部近傍断面における微小押し込み硬さ試験結果から、大気中でフェムト秒レーザーを照射することで純鉄表層が硬化することが確認された。照射パルスエネルギーを増加させることで、最高硬さおよび硬化深さが増大する傾向を示した。さらに、レーザー強度一定の下、照射パルス数を増加させることでも、最高硬さ及び硬化深さが増大する傾向が見られた。次に、硬化の原因を検証するため、レーザー照射表面に対するX線回折を行った。X線回折の結果、レーザー照射後の純鉄表層における不均一格子歪みの導入が確認された。以上のことから、硬化の原因はフェムト秒レーザー照射時に誘起される衝撃波によって純鉄表層が塑性変形を受け、格子欠陥が増大したことによるものであると考えられる。
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Physics of Plasmas
巻: 17 ページ: 054502-1-054502-4
Journal of Physics Conference Series
巻: 215 ページ: 012152-1-012152-4