研究概要 |
本年度は,主としてMo-Cr系窒化物バルク体の沸騰硫酸環境下での耐食性と大気中での耐酸化性について検討した. 前年と同様に,0~100wt%のCrNを含むMo_2N-CrN混合紛体を直接加圧通電により焼結した(直径30mm,高さ20mm).得られた焼結体を放電加工により1.5×10×10mmの形状に切断し,エメリー線により表面の酸化層を研磨除去した.75wt%沸騰硫酸中での耐食性を検討した結果,CrN量の増加に伴い耐食性が低下する傾向を示したが,いずれの試料も完全耐食性とみなすことが出来る腐食速度であった.50wt%以上のCrNを添加した焼結体は2種類のMo-Cr系窒化物固溶体が共存した組織であるが,Crリッチ組成の固溶体結晶粒が選択的に溶解していることが明らかとなった.大気中での耐酸化性を検討した結果,50wt%以上のCrNを添加した焼結体は900℃まで良好な耐酸化性を示すことが分かった.酸化生成物は緻密なCr酸化物であり,これが耐酸化性保護膜として有効に機能していること考えられる.酸化被膜中には湿式ボールミル混合時に混入したと思われるSiが蓄積しており,焼結体中の含有Si量が耐食性ならびに耐酸化性に何らかの影響を及ぼしていることが示唆された.
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