研究概要 |
フェムト秒レーザーを加工閾値近傍で照射すると、波長オーダーの周期的な微細構造が形成され、材料表面でのコヒーレント光と物質の相互作用に関する知見が得られる。パワーデバイスに用いられる半導体材料であるSiCではレーザー波長800nmより小さな250nm間隔等の周期構造が形成され、一般的に考えられている表面散乱波等の干渉では説明できない。特徴的な周期構造が得られるSiCに対して照射パルス間隔をパルス幅程度まで短くできるダブルパルス加工実験を行い、周期構造の形成過程を考察した。ダブルパルスのパルス間隔への依存性を観察することで、過渡的なキャリア励起に関する知見が得られると期待される。ハーフミラーでレーザーパルスを2つに分け、一つのパルスに空間的な遅延を加えることによって200psまでのパルス間隔を持ったダブルパルスを作成した。それぞれのパルスは半波長板と薄膜偏光子からなるアッテネータでエネルギーの調整が可能であり、焦点距離125mmの合成石英平凸レンズでSiC上に垂直照射した。パルスのフルーエンスが0,31J/cm^2であるダブルパルスを10組照射し、SiC表面を走査型電子顕微鏡で観察した。パルス間隔200fsではレーザーの偏光方向に垂直に250nm間隔の周期構造が形成されたが、パルス間隔10psでは形成方向が90度回転した。この現象は同じ半導体であるSiには見られない現象である。イメージングポンプ・プローブ実験によって得られるSiCのアブレーション過程とこの周期構造の形成変化は時間的に対応することがわかった。
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