ガラス-Siの替わりにAl-Si合金を加工試料としてフェムト秒レーザーを用いた表面形状の制御を行い表面状態の変化を実験的に調べた。アブレーションレート(L:単位nm)の照射フルーエンス(F:単位J/cm^2)依存性を実験的に取得しモデル式にフィッティングさせた結果、AlとSiのアブレーションレートはそれぞれL=61・ln(F/0.34)、L=8・ln(F/0.25)+19・ln(F/0.34)で与えられることが分かった。ここで、自然対数lnの係数は実効的光侵入長を、ln内の分母はアブレーションしきい値に相当する。Siは半導体であるため、フェムト秒パルス照射が始まると瞬時にキャリアが励起され表面近傍には金属と同様に自由電子が生成され、金属と同等あるいは金属よりも短い光侵入長が実効的に得られた。また、合金中のSiは結晶粒として存在しており、弱いレーザー照射を重ねると相変化が誘起されアモルファスとなり、シングルショットの加工しきい値以下でもマルチショットの加工が誘起される。そのため、加工レートの変化が低フルーエンス領域まで伸び、AlよりもSiの加工しきい値が低下したものと考えられる。これにより、照射フルーエンス0.25~0.34J/cm^2の範囲ではSiを選択的に相変化させアブレートすることができ、0.34J/cm^2以上では加工レートの差によりAlを準選択的にアブレートさせることができる。また、Si含有率が低い合金中のSi結晶粒の大きさは数μm程度であり、電界集中効果によりアブレーションしきい値以下のレーザー照射においても加工が始まることが確認された。Al-Si合金のSi含有率と照射フルーエンスを制御することにより、Siの相変化を誘起し試料表面にサイズの異なる凹凸および微細周期構造を作成することに成功した。
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