研究課題/領域番号 |
21560764
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
熊倉 浩明 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導材料センター, センター長 (90354307)
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研究分担者 |
松本 明善 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導材料センター, 主任研究員 (50354303)
戸叶 一正 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導材料センター, 研究業務員 (60361169)
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キーワード | 二硼化マグネシウム / 拡散反応 / 超伝導線材 / 機械加工 / 充填率 / 臨界電流密度 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、純Mg棒をコアとして配した内部Mg拡散法によりMgB_2線材を作製した。本年度は、19芯の多芯MgB_2線材を作製するとともに、芯数の増加による組織や臨界電流特性の変化を調べた。 反応層あたりの臨界電流密度J_cを最高にする熱処理温度は、今回の19芯までの実験では640℃近傍であり、また最適熱処理時間は1時間程度である。 単芯線材ではBの充填層がMgの拡散距離に比べてはるかに厚いために、Mgコア近傍のB層しかMgと反応しておらず、外側のB層は未反応のままである。7芯線材においては、B層の厚さが単芯線材に比べてはるかに薄いために大部分のB層はMgと反応してMgB_2が生成しているが、一部にまだ未反応のBが残留している。19芯線材では、B層厚がさらに薄くなり、B層は完全にMgと反応してMgB_2となっている。単芯線材においては熱処理温度を上げたり、熱処理時間を長くすると反応相の厚みは増大するが、結晶粒の粗大化が起きて反応層当りのJ_c特性は低下してしまう。すなわち、640℃という比較的低温の温度で短時間熱処理するのが高い反応層あたりのJ_cを得るために有効であり、線材の電流容量である臨界電流々を上げるためには、MgコアとB層との界面の面積を増大させて生成するMgB_2化合物の量を増大させるのが有効である。このために、単芯線材よりも多芯線材の方が高いI_cを示す。 以上の研究により、芯数を増大させることによりB層厚を減少させることができ、低温、短時間の熱処理でもBとMgとの反応が完全に起こって十分な量のMgB_2が生成され、高いI_cやJ_cを得ることが可能になることが判明した。さらに芯数を増やすことで、より低い熱処理温度でも反応が完全に起こって、より高いI_cやJ_cが期待できると考えられる。これは、今後さらなる高J_c化や高I_c化を達成して実用化に結びつけるための指針となる成果である。
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