研究概要 |
マグネシウムからの銅の除去についてはチタンへの吸収による方法に絞って研究を行った.融解した純マグネシウム金属に銅を溶解させたものを模擬試料として用い,チタン金属棒を浸漬して,これに吸収された銅の量を電子顕微鏡に付属するEPMAにより定量した.深さ方向への濃度分布から,チタン中への銅の吸収は拡散律速であることが示された.拡散係数は報告値よりかなり大きな値となり,銅の拡散がマグネシウムの存在によって促進されることが示唆された.昨年度までの成果を参考にし,溶湯温度やチタン棒表面状態を変化させた実験も行ったが,依然として吸収速度や吸収量はあまり大きくならなかった. マグネシウムからの鉄の除去については,選択炭化による方法に絞って検討した.実験には鉄を飽和したマグネシウム金属を用い,これを炭素るつぼ,およびマグネシアるつぼ中で溶解して,一定時間後に冷却・凝固させ,得られた鋳塊の鉄の分布をSEM(EPMA)やICPにより測定した.カルシウムを助剤として添加することが,鉄の除去に非常に効果的であることが確かめられた.炭素とカルシウムを同時に用いて処理を行った場合,鋳塊中で鉄を含む介在物はルツボ近傍,および引け巣周辺に濃縮しており,鋳塊中心部付近ではかなり除去されていた.また,このような処理をした鋳塊を再溶解・再凝固させると,鉄を含む介在物がさらに除去されることがわかった.このような結果から,炭素とカルシウムを用いることによって,マグネシウム中の鉄を簡便かつ効率的に除去可能であることが確かめられた.さらに,このような処理によって得られた鋳塊中の鉄を含む介在物の分布が明らかになり,これらを積極的に分散させた材料の開発を行う上での知見を得ることができた.
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