本研究は、アニオン交換膜とカチオン交換膜を貼り合わせた特殊な構造を有するバイポーラ膜を電解隔膜に用いた電解槽による強酸化性溶媒のフェレート溶液の製造と、フェレート溶液をノンクロム代替酸化剤としてめっき分野、水処理分野に応用するための基礎調査からなる。 最終年度は、まずカチオン交換膜、アニオン交換膜とバイポーラ膜とのフェレート製造の結果を総合的に比較検討した結果、バイポーラ膜電解槽を用いたフェレート製造の原理的優位性を検証できた。しかし、アニオン。カチオン交換膜との接着面を有するために電力消費がやや大きくなった。次に小型電解槽で得られているデータから、効率よくフェレートが生成できるオンサイト型のモデル電解槽として、極間距離を短くした縦型電解槽を設計作製した。改良のポイントは鉄源であるスチールウール内を電解液と生成フェレートの拡散移動速度が向上できるように、循環系、電解液噴出管構造、さらには生成フェレートの水による還元を抑制するために溶液温度調整槽に改良を加えた。 フェレート溶液の応用については、表面処理分野の無電解めっき用ABS樹脂へのフェレート溶液のノンクロム前処理剤として可能性を調査した。室温におけるフェレート浸漬時間の増加に伴いめっき皮膜の密着性は向上し、現行の高クロム酸エッチング処理と同程度のめっき皮膜が得られた。フェレート溶液を使用したエッチング処理条件としては、常温で30分~60分の間の浸漬時間で十分であった。しかし、表面やポリブタジエン空孔内に残留するゲータイトの除去工程が付かされることとなった。無電解めっきの前処理におけるABS基板のエッチング剤にフェレート溶液が、現行のCr(VI)の代替液になれる可能性が見出された。
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