一定以上の応力を加えないとずり流動を生じないスラリー系流体を、小型翼を用いて撹拌すると、翼の廻りにのみ流動が生じ、その外側では静止する現象を生じることが知られている。このような流動領域はカバーンと呼ばれ、カバーン内外では液の交換が起こらないため、槽全体の混合状態が極めて不良となる。一方、通気操作を行うことで槽内に大きな循環流を発生できることが知られている。 そこで本研究では撹拌槽におけるスラリー系流体を対象とし、通気操作を行うことで槽内の流動・混合状態を改善させることができるかを定量的に検討した。用いたスパージャーは2種類であり、リング径0.09mの小スパージャーと、リング径0.14mの大スパージャー、大小2つを組み合わせた計3通りで実験を行った。スパージャーは槽底に設置した。翼には、通気撹拌時に、翼の背後に気泡が集まり大気泡化することを防ぐことのできる6枚コンケーブ翼を用いた。対象液は、降伏応力を有する0.2wt%カルボキシビニルポリマー水溶液とした。通気操作を行わない翼のみでの実験ではカバーン内にヨウ素溶液を注入して、カバーンを褐色にする着色法を用いた。一方、通気操作時には、カルボポール水溶液にヨウ素溶液を注入してカルボポール水溶液を褐色に着色した後、通気撹拌を開始し、チオ硫酸ナトリウム水溶液を液面の軸近傍から注入して脱色し、淀み領域を可視化する手法を用いた。槽縦断面における淀み領域の面積は画像処理ソフト"Image Hyper II"を用いて求めた。 検討の結果、以下の3つのことが明らかとなった。1.通気操作を行うことは、この改善に対して有効である。2.よどみ領域を解消させるためには、翼を槽底近傍に設置することにより、よどみ領域を撹拌し流動を起こすことが重要である。3.大スパージャーを槽底部に設置することにより、よどみ領域を通る流れを起こすことが重要である。
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