研究概要 |
一定以上の応力を加えないとずり流動を生じないスラリー系流体を小型翼を用いて撹拌すると、翼の廻りのみ流動し、その外側では静止する現象を生じることが知られている。このような流動領域はカバーンと呼ばれ、その内外では液の交換が起こらないため、槽全体の混合が極めて不良となる。一方、通気操作を行うことで槽内に循環流を発生させることができる。しかし撹拌場での気泡群の浮遊パターンがスラリー系流体の流動状態に及ぼす影響の解明は十分になされていない。 これらのことを背景に、一昨年度(本研究初年度)は、スラリーを模擬した、降伏応力を有する流体であるカルボキシビニルポリマー水溶液流体を対象に通気撹拌操作を行い、コーンケイブ翼や大型リングスパージャーの、流動・混合状態の改善に有効である設置条件を明らかにした。前年度は同結果に基づき、通気量Q[L/min]や翼回転数n[s^<-1>]の変化が混合速度に及ぼす影響をヨウ素-ハイポ脱色過程における槽縦断面での未混合面積率の経時変化に基づき、混合速度定数紅s^<-1>を定義し、両操作条件Q,nの変化が混合速度定数kに及ぼす影響を定量的に検討した。 本年度(最終年度)は、さらに両操作条件の変化範囲をQ=10,15,20L/min,n=3,4,4/5,5,6s^<-1>にまで拡大させ、同様に検討を行った。その結果、いずれの通気速度の条件においてもn=4s^<-1>まで(以下、低回転数域)はkは一定であり、4~4.5s^<-1>(遷移域)においてkは急激に増大し、それ以上の回転数(高回転数域)ではkの増大傾向は緩慢となることを見出した。気泡と液流動の観察結果から低回転数域では、気泡は、スパージャーから上昇後、その大半は翼にトラップされずに通過すること、遷移域では、気泡は一旦翼にトラップされ合一した後、カバーンを打ち破って上昇すること、さらに高回転数域では、気泡は翼により破泡された後、翼から水平方向に吐出されることを確認し、これらのことが、上述のkの回転数依存性の原因となっていることを明らかにした。
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