研究概要 |
研究計画の最終年度である本年度は液体膜の耐久性と実用性能の向上法について種々検討をおこなって,以下の成果を得た。 (A)二酸化炭素分離膜については液体膜成分として各種アミン(1級,2級,3級)を検討上で,二酸化炭素濃縮性能および耐久性の両面からジグリコールアミン液を最適な成分として選定した。この液体膜成分による30cm角の平膜モジュールを構成して,その性能を検証した。空気中の二酸化炭素濃度より3-4倍の濃縮度の空気を0.5-1L/minの流量で供給可能であった。この液体膜装置は極地研の協力により,南極・昭和基地でテストされ,温室への二酸化炭素供給装置として,所定の性能を発揮した。一方,液体の交換方法,水蒸気の管へのつまり,アミンの漏れなどの今後の課題も明らかになった。 (B)空気中の有機蒸気成分(VOC)の分離膜としては,液体膜成分としてトリエチレングリコールのエーテル(例えばTEG-モノブチルエーテル)類が最も分離性能がよかった。これらの液体膜の有機蒸気透過係数はシリコーンゴム膜を大きく上回り,実用性のあることが明らかになった。チャンバー試験によりベンゼン,トルエン,アセトン,メタノール等のVOC蒸気の除去試験をおこない,比較した活性炭と同程度のVOC除去性能が示された。 (C)液体膜による除湿法としてはトリエチレングリコール液体により,空気中の水蒸気の分離性能を明らかにした。試作した30cm角の平膜モジュールにより2-3g/hの水蒸気を回収できることが示された。一方で、未だ実用に向けての性能が不足していることが示され,今後の改良点が課題として残された。
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