研究概要 |
本年度は,主としてポリプロピレンおよびポリカーボネートを母材としたナノコンポジット(以下,複合体とする)の着目し,溶融混練により複合体を作成し,検討を行った。得られた成果を以下にまとめる。(1)ポリプロピレンを母材としたコンポジットについては,マレイン酸変性ポリプロピレンを少量添加することにより複合体成形物の引張特性が向上し,複合体溶融体のゼロせん断粘度が増加した。以上より,マレイン酸変性ポリプロピレンはポリプロピレンと気相成長炭素繊維の親和性を向上させることがわかった。さらに気相成長炭素繊維の添加により複合体の熱伝導率は増加し,加えて,低い周波数領域での貯蔵弾性率も増加し,気相成長炭素繊維が溶融体の長時間緩和成分の増加に寄与することがわかった。(2)ポリカーボネートを母材とした複合体溶融物のスウェル比(押出物の直径とノズルの直径との比)は,せん断速度の増加とともに大きくなり,気相成長炭素繊維の含有率を増加させると減少するという繊維懸濁液の流動特性と類似した結果を得た。固体のSEM観察より気相成長炭素繊維はマトリックス中で比較的良好に分散していることから,ポリマー/気相成長炭素繊維系複合体融液の流れは,繊維含有懸濁液の流れを表す流体モデルがよく表しうる可能性が示唆された。ただ,一部のデータでスウェル比が1を下回る結果が得られ,ダイスウェルの測定方法やダイスウェル測定の際の母材の選定を含めた再検討が必要となでった。
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