医薬など有機化合物の溶液晶析(結晶生成)においては、溶液中での結晶核生成を制御することが所望の結晶を製造する上で重要である。本研究では、溶液中の会合体形成が核形成に重大な影響を及ぼすという観点から、結晶核形成メカニズムについて検討した、また、ナノ医薬結晶を製造する目的で、微結晶製造のための新規な晶析法を検討した。 先ず、核発生のメカニズム解明に関する研究では、0.003℃の誤差で温度制御することによって溶液の熱対流速度を2μm/sと極度に抑制できる結晶核形成観察装置を作成し、核形成が溶液構造を介して伝搬するという仮説を証明する実験を開始することができた。以前の実験では、溶液の対流を抑えることが困難であった。 溶液中に形成される会合体の構造を制御して、微結晶(マイクロ結晶およびナノ結晶)を製造する晶析法開発に関する研究では、本研究で提案している、1) 反復回分晶析、およびマイクロ波照射晶析の有効性について検討した。反復回分晶析は、回分晶析で結晶析出と完全溶解を繰り返し行う晶析法である。これによって、核形成のタイミングが揃い、結晶は微小化することがわかった。とくに今回の実験では、核形成のタイミングが揃う原因を明らかにすることを目的として、NMRによる溶質分子の緩和時間測定を行った。その結果、結晶を再溶解して少なくとも20min以内の溶液では、溶質分子は動きにくい(強く会合している)状態を維持していることがわかり、溶解しても結晶構造に近い会合状態が短時間維持されていることが示唆された。マイクロ波照射晶析では、溶液を晶析目的で冷却する前に、溶液にマイクロ波を所定時間照射することによって、得られる結晶が微結晶化することがわかった。また、特定の界面活性剤を溶液に添加することによって、微結晶化効果が促進された。 さらに、多形の析出と溶液構造との関係について検討した。
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