研究概要 |
本研究は,核発生を利用して様々な成分を結晶核でカプセリングする方法を開発するための基礎研究であり,1)カプセリング現象の把握と操作,2)脱カプセリング現象の把握と操作に分けられる. カプセリング操作でのポイントは,非カプセリング成分を結晶核の芯にすること,非カプセリング成分に対して結晶核カプセル成分,溶媒,貧溶媒から成る溶液環境を強力な熱力学溶液モデルにより推定すること,微小液滴相とバルク溶液相の混合操作方法にあり.昨年度の研究である程度の成果をを出すことができた.次の脱カプセリング操作でのポイントは,いろいろな溶液環境におけるカプセルの温感性を測定し,人工的に超高圧,放射線,超音波,電磁波などによる結晶核カプセルの分解性能にあるが,これは,今後も検討を続ける必要がある.この中でも実用的な方法である超音波やマイクロバブルの利用を検討する予定である. 平成23年度の研究では,スプレー相互貧溶媒法で生成した無機の塩化アンモニウムと有機のパルミチン酸の混合結晶の構造について,放射光施設SPring8を使って小角X線解析を行った. 前年度のX線回折では,混合結晶中の無機の塩化アンモニウムも有機のパルミチン酸も通常の結晶構造であることがわかったが,カプセル構造を検討する場合はさらに大きなスケールの規則性について検討する必要がある。Spring8による構造解析では混合結晶中のパルミチン酸の結晶構造の長距離秩序が検討でき,その結果10-20nmの構造と40-50nmの構造が混在していることがわかった.混合結晶性カプセル中の塩化アンモニウムの比率が大きくなれば,40-50nmのより大きな秩序性が少なくなることもわかった.さらに,相互貧溶媒法のスプレー溶液の入れ替えがパルミチン酸の結晶構造の長距離秩序に影響を与えることもわかった.
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