古典的ラジカル重合の有する優れた汎用性にリビング性に起因する高い制御性を付与した制御/リビングラジカル重合は、高品質・高機能な高分子を合成することのできる画期的な重合手法である。また、環境問題への配慮から水、超臨界二酸化炭素、イオン液体などがこれまでの有機溶剤の代替媒体として注目されており、不均一系における重合反応は微粒子合成のみならず環境対応型媒体中での重合方法としても注目されている。本研究は、水媒体不均一系における制御/リビングラジカル重合プロセスを設計する際に基盤となる反応工学理論の確立を目指している。すなわち、種々雑多な制御/リビングラジカル重合プロセスを統一的に理解することにより、今後、急増すると予想される制御/リビングラジカル高分子微粒子の工業化に貢献することを目標としている。 初年度である21年度は、物質移動の影響が無視小であるミニエマルション重合を対象とした理想系での理論解析を行い、種々の制御・リビングラジカル重合反応を統一的に記述できる重合反応速度式を導出した。この式は、ナノサイズ(100nm程度以下)の反応場での重合速度も記述することができる。この式に基づいて、制御/リビングラジカル重合を微粒子反応場で行う際の特徴を解明しつつあり、各成分濃度の統計的揺らぎが重合反応速度に影響を及ぼすことを世界に先駆けて示した。なお、本研究の予備的な検討結果を報告した論文がWiley-VCH社が出版する高分子科学系の学術雑誌7誌に過去18ヶ月間に掲載された論文約1200の中から9つの優秀論文を選んで出版された"Best of Macromolecular Journals 2009"に選出され、その表紙を飾った。
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