研究概要 |
本研究の初年度,企業技術者へのヒアリングを行い,品質実現力強化に向けた従来技術の問題点を明らかにすると共に,プロセス特性の変化に統計的モデルを適応させる技術,および,強い相関を持つ多変数を対象として定量的な要因解析を行う技術の開発に取り組んだ.まず,モデル構築技術では,変数問の相関関係に着目した新たなクラスタリング手法(NCSC法)を開発し,これをJust-In-Timeモデルと組み合わせることで,従来よりも高精度なモデルを構築できることを確認した.また,多変量データ解析手法として広く活用されているPartial Least SquaresをJust-In-Timeモデルと併用する局所PLS法を化学反応バッチプロセスへ適用し,その有効性を示した.これらの技術は,プロセス特性変化や製品種切替などに対応できるモデル構築技術の基盤になると期待される.一方,要因解析技術では,主成分回帰と独立成分分析を用いて,入力変数から出力変数への影響度を算出する方法を開発し,複数装置から構成される複雑な化学プロセスへの適用を通して,その有効性を確認した.この技術により,回帰係数がバイアスを持つという従来の多変量解析の欠点を克服し,希望品質を実現するために操作すべき運転条件を的確に把握できるようになる.さらに,グレイボックスモデル構築については,企業へのヒアリング結果に基づき,鉄鋼プロセスの連続鋳造機における溶鋼温度推定を検討対象とし,取鍋の状態を表現する物理モデルの構築方針について検討した.来年度,第一原理モデルの構築および統計解析との統合を実施する.
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