研究概要 |
本年度の顕著な研究成果は大きく分類して2つある.1つはLW-PLS(Locally Weighted Partial Least Squares)の医薬品製造プロセスおよび半導体プロセスへの適用であり,もう1つは鉄鋼プロセスを対象としたグレイボックスモデルの開発である.以下,それぞれの概要を述べる. 1) LW-PLSの医薬品製造プロセスおよび半導体プロセスへの適用 昨年度に基本技術を開発したLW-PLSをさらに改良し,医薬品製造設備を対象とした洗浄後残留薬物測定法および顆粒中API(Active Pharmaceutical Ingredient)含量測定法を開発し,実機データでの検証を実施した.残留薬物測定にはIR-RASを,API含量測定にはNIRSを利用し,測定スペクトルを入力としてLW-PLSモデルを構築した結果,いずれの適用でも従来法に比べて推定誤差(RMSE)を約30%改善できた.リアルタイムモニタリングの実現に大きく寄与する結果である.さらに,半導体プロセスのドライエッチ工程を対象として,製造条件からエッチング変換差を予測するLW-PLSモデルを構築した結果,プロセス特性変化に適応できる特長のため,従来法に比べて推定誤差を約40%改善できた.高品質製品の安定製造に不可欠なVM(Virtual MetrOlogy)技術として,今後の展開が期待される. 2) グレイボックスモデルによるタンディッシュ内溶鋼温度推定 鉄鋼製品の品質に大きな影響を与えるタンディッシュ内溶鋼温度の精密制御を実現するために,二次精錬から連続鋳造までを対象とする物理モデルを構築し,その推定誤差を統計的モデルによって補償するグレイボックスモデルを開発した.実機データでの検証を実施した結果,物理モデルあるいは統計的モデル単独と比べて推定誤差を約40%改善できた.高品質製品安定製造の基盤技術として期待される.
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